anniehall’s diary

私が入れる倶楽部には入りたくない症候群

お里が知れる

ご近所の家族と食事した。

とてもいいご子息たち。

愛情いっぱいの手料理で大切に育てられた、純粋な少年たち。

美味しそうにガツガツ食べる姿は、微笑ましい。

茶碗をテーブルに置いたまま、肘をつき、顔を器によせ、はちゃめちゃな箸使いでかっこむ。

男たちの言葉を思い出す。

女友達の言葉を思い出す。

母の言葉を思い出す。

 

「そんな箸の持ち方する奴にこんなうまい刺身食う資格ねぇ」

「箸を正しく持てるようになるまで父親に合わせられない」

「箸の持ち方でお里が知れるわよね」

 

私は箸が上手に持てない。

という自覚すらなく、大人になった。

指摘されて恥ずかしくて、慌てて「エジソンの箸」を購入して矯正した。

お母さんのせいだ。

お母さんのせいで、恥をかいた。

 

そう思って「なんで正しい箸の持ち方を教えなかったのか」と母をせめた。

そしたら、母は申し訳なさそうに言った。

 

「だって、美味しそうに食べてくれたらそれだけで良かったから」

 

私は生まれつきものすごい種類の食物アレルギーを持っていて、

小さい頃、美味しく食べれるものがほとんどなかった。

 

小麦アレルギーでパンを食べると耳が切れた。

卵は触れただけで、触れた部分が腫れ上がった。

乳製品は口にすると吐き気を催した。

そばを食べると喘息を起こした。

 

不憫な子。

その上食べ方やら箸の持ち方やら、口うるさく言えるわけないじゃんね。

 

人には、色んな事情があるんです。

 

この、美味しそうに母の手料理をかっこむ無垢な少年たちが、

社会に出て「お里が知れる」なんて、気取ったブスに言われたら…なんて思うと悲しくて仕方ない。

 

この子たちは、育ちがいい。

私だって、育ちがいい。

 

一生懸命育てた親がいると思うと、

もしくは一生懸命育ててくれる親がいなかったのかと思うと、

誰のことも憎めなくなる今日この頃。